Ms.teryさん

気の向くままに

もう仮面を被るのはウンザリだ

※下的な(えっちな)話が苦手な人はそのままお家に帰ることをおすすめします。

 

自傷行為って言うとリスカが思い浮かぶ。誰かが決めたわけでもないのにカッターを用意して、袖をまくり、鈍く光る刃を突き立て、肌に薄く通す。血が溢れ、一滴の雫となって肌を滑る。

 

3日前久々に自分の血を見て気絶しそうになった僕だが、たった一度だけリスカをしたことがある。死にたがりだった僕は刃を手首に突き刺した。カットというよりはスタッブだった。望んで刺したが、痛みのあまりすぐに抜いてしまった。血が肌を滑り落ち、床が赤く汚れた。カーペットに垂れたせいで跡を消すのが大変だった。結局、完璧には落とせなかった。痛い上に汚れるってのにリスカをするやつはどうかしていると思った。でも、自分を偽る日々の中でどこか痛みを求めていた。

 

僕がたった一度だけやったリスカは小学校低学年の時だった。当時の僕はリスカなんて言葉を知らなかったのだが、両親の離婚や友達のいたずら、人に怯え自分を偽る日々に疲れていた。目の前にカッターがあったから使った。使い方はテレビで見た。何のドラマだったか覚えていない。手首を切って自殺するごく普通のサスペンスドラマ。自分が死にたいかどうかわからなかったけれど、生きるのは辛かったからほんの軽い気持ちでやった。想像以上に痛かった。多分痛かった。もう痛みも忘れてしまったけど…

 

正直、少し後悔した。今までの人生で経験したことのなかった痛みだったから、もうやりたくないと思った。でも、辛さに耐えられなくなりそうだった。

 

そんな時に公園でマンガを見つけた。ジャ○プのような色々書かれた大きいマンガ。ただ内容は理解できないものばかりだった。あるページでは、女の人が男の股に顔を埋めていた。他のページでは、男の人が己の肉棒を掴んでいた。そしてまた別のページでは、女の股に男の肉棒を差し込んでいた。どのページの男性も女性も裸だったから、えっちなマンガであることはわかった。でも、それ以外はわからなかった。そして最もわからないセリフを女の人が言っていた。「生きていてよかった」このページをはっきりと覚えている。行為の後、男の人の腕の中で裸の女の人が言っていた。

 

その日、生まれて初めて自慰をした。流石にマンガを家に持ち帰るのはできなかったが、覚えている限り一生懸命見様見真似で頑張った。今まで味わったことのない感覚だった。身体全体がくすぐられているようで、腰が浮き、それでも手は止めず、快楽のままにした。気持ちよかった。女の人の言うように生きるのも悪くないと思った。でもそれはただひと時の感情で、すぐに虚しくなった。虚しくなっては手を動かし、快楽に浸って、虚しさを迎える。それの繰り返し。痛かった。心のどこかが痛かった。けれども、その痛みは心地よかった。自分を偽る日々の苦しさをこの痛みが和らげてくれた。

 

自分を壊すように自慰をした。その行為中だけは他のことを考えずに済む。あれこれと悩まずに済む。自慰だけが救いだった。

 

僕にとって自慰は世間一般的な自傷行為と同じような意味だった。性に目覚めたのが小学校低学年って早すぎるとは思うが、当時の僕はそれが何かもわからなかった。ただただ気持ちくて、痛みが和らいだ。そうして僕は“期待される僕”を演じ続けることができた。壊れそうな時は自分を慰めるという風に“僕”を保った。壊れそうというよりもう壊れていたのかもしれない。“自慰”というものがなんなのか知った時にはもう自慰をやめることはできなくなっていた。

 

高校に入る前にはもう自慰だけでは足りなくなった。“僕”を偽ることに限界を迎えていた。そして入学後、大切な人と出会った。初めて恋愛感情を知った。僕は僕の意思で彼女と付き合いたいと思った。そして、付き合うことができた。彼女との日々は素晴らしく、自慰の数も減った。自分を偽ることも減った。本当に少しずつ僕は僕を認めることができた。

 

でも幸せな日々は長く続かなかった。順調に行っていたように見えるかもしれないが、僕は僕を認める過程で自己嫌悪が激しくなった。そのせいで周りに迷惑をかけ、彼女が僕から離れていった。

 

それからというもの毎日のように自慰をした。僕は彼女を忘れることができなかった。ただひたすらに快楽に浸った。そんな生活が今でも続いている。

 

でも、やはり自慰だけではどうにもならない。僕は僕を壊したい。めちゃくちゃにしてしまいたい。最近はセックスのことを考えている。誰ともわからない人とするセックスのことを。そうすればきっともっと痛い。そして、その痛みで彼女を忘れることができるのではないか。そんなことばかり考えている。

 

“僕”という仮面を被るのはもうウンザリだ。周りに気を遣って、いい人を演じて、僕は大丈夫だと主張する。馬鹿らしいよな。もうなんで仮面が必要なのかもわからなくなった。

 

だから、ここに吐き捨てた。こんなのやつあたりだ。わかってる。でも、疲れたんだ。不器用な僕にとっては生きることはすごく難しい。