僕のルールのうちの一つ
“いただきます”と“ごちそうさま”をできる限り言うようにする
食事は現在だと毎日摂るもので、そんな中で生活していると命がなんなのかわからなくなってくる。目の前にある料理は牛、豚、鶏、鮭などと言ったものが沢山使われている。
気づいたんだ。僕は目の前のステーキと野原を歩く牛の姿が結びつかなかった。目の前の生姜焼きと泥遊びをする豚の姿が結びつかなかった。唐揚げを見ても、焼き鮭を見ても生きている彼らと“それ”が結びつかなかった。
僕は僕が生きている中で誰かを殺していることに気づいていなかった。いや、頭ではわかっていた。僕は無関心だった。気にしようとも思わなかった。
そんなある日、生きている彼らを見ようと動物園に行った。動物園と言っても小さな小さな動物園。でも、そこには確かに彼らがいた。僕の知らない彼らがいた。
彼らも僕らと同じように生きていた。周りの仲間と遊んで楽しそうだった。ちょっとした好奇心でワッて声を上げたら驚いていた。両親が構ってくれなくて悲しそうだった。
でも、ひとつだけ違った。決定的に違った。僕はそれをワニで見た。飼育員が餌をあげていた。切られた肉。もう生きていない肉。飼育員が毎日餌をあげるのだから放って置いてもいいはずなのに、ワニはすぐに飛びついた。誰かに奪われることを恐れるように貪りついた。
僕はワニのようになりたいと思った。料理と彼らが結びつかなくとも、結びつけたいと思った。だから、少なくとも“いただきます”と“ごちそうさま”を言おうと決めた。その時だけは、ちゃんと生きていた命と向き合おうと決めた。