Ms.teryさん

気の向くままに

僻み

人と関わるのが心底怖かった。誰かの幸せを背負ってしまうから。そうして自由に生きられないから。そんなのはカッコつけで、本当は自分が薄れてしまいそうだから。ただそれだけ。でもそのことがとても怖かったんだ。

誰かと深く関わるということを避けてきた。僕は“俺”を演じて、友達と仲がいいのは僕なのではなく“俺”なのだ。そうすることで人との関わりに自分の色を混ぜることを逃れた。そんなことを長い間続けてた。

でも魔が刺した。ある人と深く関わってみたくなった。関わることへの恐怖は杞憂なのではないかと思った。もしかしたらそれはある意味では正しかったのかもしれない。結局関わった結果、僕の色が薄れることはなかった。ただ僕の色は確かに誰かと混ざった。

相変わらず関わりへの恐怖は消えなかった。正確に言えば消えなかったのではなく形を変えた。僕は関わることの楽しさを知ってしまった。知った途端に滲み出た。そして僕は思い知った。人が持つ色は単なる色なんかじゃない。どちらかと言うと色水だった。僕の色が周りを侵食していった。そのことを感謝されたこともある。だけど、それが僕には大罪に思えた。

僕が関わりたいと願ったある人は濁ってしまった。混ざっちゃいけない色ってあるだろ?それが僕だった。その人の強さを僕がもいだ。

こう見えても反省してるんだ。関わりすぎてしまったんだって。僕として接していたもんだから、今更“俺”にだってなれやしない。だからその人との関わりを完全に絶とう思った。

本当にそう思ったんだよ。なのに何故かその人は誰よりも鮮明になっていた。少し見ない間に濁ってたはずの色が綺麗な色をしてたんだ。わかんなくなった。僕のしたことの是非がわからなくなった。

僕は結局、加害者になりたくないだけだった。僕が汚してしまいそうで、それがたまらなく我慢できなくて、責められたら弁解の余地なんてあるはずもないように思えて。だから関係者でいるのをやめたいって思った。ただそれも逃げのように感じて同等に罪深い行いなのではないかと考えてしまった。

加害者になったからって、ひよってさようならってあまりにも不誠実過ぎる。僕として接してしまった以上、責任は僕自身にあった。結果として僕は関係を断つことはなかった。

それでも願ってしまう。拒絶して欲しい。そうしてくれさえすれば、僕は救われる。そんなことを考えるけれど、きっと拒絶なんてされないだろう。そのことがこの上なく嬉しくて、とてつもなく苦しい。