Ms.teryさん

気の向くままに

悲しい彼のお話

ある少年がいました。彼の目に映る世界はつまらないものでした。それもそのはず彼は自分を介すことでしか認識できない世界を、偽りというもう一つのフィルターを通していました。

彼が偽るようになった理由はわかりません。家を出て行った父親のせいか、はたまた話すことですら許されないクラスのせいか。しかし理由なんてなくてもよかったのです。そんなもの彼にとっては不要でした。

彼は色を求めていました。心躍るような色を求めていました。彼の目に映る世界はモノトーンでした。彼が写真家であればよかったのかもしれません。残念ながら彼にはモノトーンの価値がわかりませんでした。

そんなある時、彼は偽ることをやめました。彼はフィルターを取り除けば、鮮明な色を目の当たりにすることができると思っていました。ですが実際、彼の目に色が映ることはありませんでした。

フィルターはたしかに消えましたが、彼は自分と世界の間にあった偽りというフィルターの空間を縮めることができなかったのです。偽りは秘匿になりました。嘘をつくことはやめても、自分を曝け出すことはできませんでした。その結果焦点が合わず、彼の目に色が映ることはありませんでした。

それでも彼は色を求めていました。いや、今でも本当の色を求めているのかもしれません。自分と世界との空間を無くそうと努めているのかもしれません。けれども、彼は頼り方がわかりませんでした。世界との関わり方がわかりませんでした。手を差し伸べられても、その手を握り返すことができません。大丈夫?と声をかけられても、その声に応えることができません。

今までにも彼を助けようとする優しい人がいました。不器用な彼は助けを求める方法も、人と関わる方法も、優しさを受け止める方法もわかりませんでした。どうすることもできませんでした。

結局そのまま死んでしまいました。彼はずっと色を求めていました。それはないものねだりという言葉は不似合いです。彼は生きる活力を求めていました。もしかすると彼と世界との間に空間なんてなかったのかもしれません。かと言って彼が色盲であったわけでもないでしょう。

私が今何を言っても、答えを知ってるのは彼だけなんですけどね。