Ms.teryさん

気の向くままに

自己肯定感

特別本を読むというわけではない。好きな作家がいることにはいるが、他の人の本を読むかと聞かれるとそうではない。だから本を読む人に比べて圧倒的に語彙力が足りていない。及ぶわけがない。

そんな僕は国語が苦手だった。というより文章を書くこと自体が苦手だった。小中の頃なんか「〜だけど、〜けど…」みたいな文なんて余裕で書いていた。読み返すのも面倒で先生に指摘されて気づく程だった。言葉にすること自体が億劫だった。

でもある日、本当に唐突に僕の中にあったはずのものがなくなっていることに気づいた。そこには僕を構成していたはずの何かがあったはずだ。ああ、これがドーナツの穴みたいだってことなんだなって思った。穴を穴だけ切り取れないように、僕が存在することを証明なんかできない。それが不気味に感じた。何者でもない僕が失くなったものさえも気づかないのであれば、そのうちに消えてしまいそうで怖かった。

僕は僕のまま死んでいきたい。本気でそう思ってた。誰かを巻き込んで、ありったけの迷惑をかけて、鮮やかな紅色でそいつの世界を染めたかった。少し歪んでいるけれど、そう望んでいた僕は僕が消えることへの耐え難い恐怖に夜も眠れなかった。

僕は僕でいよう。そう思い立って言葉にしていった。自分の感情を書き出した。当然、最初の頃は酷い文章だった。それでも恐怖から逃れるために書き続けた。書き溜めて、読み返した。そうすると自然と変な文章がそれなりに伝わるようなものになっていった。

才能なんかじゃない。そんな大層なものじゃない。ただただ逃げてきた結果だ。なのに何故だか最近よく褒められる。すごいねって言われる。そろそろ認めてもいいのだろうか。僕はすごいんだって思ってもいいのだろうか。きっとそう思えることが才能への第一歩なのかもしれない。