Ms.teryさん

気の向くままに

造形

不確かなものを形にするとき、その輪郭がわからなくなる。

はっきりと知覚していたわけではない。
けれど、確かにそこにあるのは知っている。
どんなものか気になって、指先でなぞってみる。
とても心地いい。
肌触りのいいそれに指を走らせる。
きっとこうだろう。きっとそうだろう。

ふとした瞬間、跡しか残っていないことに気づく。

どうしようもなく怖くなる。
僕が触れていたものは一体なんだったのか。
怖い。焦る。とても怖い。
今度はそれを掬おうと思い至る。
大丈夫。怖くない。きっと大丈夫。
丁寧に手のひらで持ち上げる。
けれどもそれは、指の隙間から落ちていく。

途端にわからなくなる。
これとあれは同じものなのだろうか。
微かな疑念が侵食していく。
そしてまた怖くなる。
指先の温度、手のひらの感触。
不確かなものを形にするとき、その輪郭がわからなくなる。