自分の中の何かが壊れる、そんな瞬間を迎えたことはあるだろうか。
自分を支える細い糸に向かって、小さな小さな出来事がボタンを押して、大きなハサミを動かす。このハサミは錆びついていて切れ味など皆無だが、確かに糸はほつれていく。バーバーカットみたいなイメージかな。
その過程は身が裂けるような痛みを伴う。けれど、最後の一瞬だけは違う。ぷつん。微かな音だけが聞こえる。
もう戻ることなどできないのだと悟る。変わってしまった自分へ絶望したいが、感情すら湧かない。ただ何かを失ったことだけを俯瞰する。そんな瞬間を迎えたことがあるだろうか。
つい先日人差し指を切った。その出来事が僕の何かを変えた。大切な何かだった。飛び出して、誰が奪ったんだ返せって泣き叫びたかった。でも、どうでもよかった。大切な何かがなんだったのか知りたいとも思わなかった。
気づいたんだ。僕は唯一持ってた生きる理由まで無くしてしまった。僕はもう生きる目的も意味も理由すらも持ち合わせていない。