Ms.teryさん

気の向くままに

どれほどの絶望があって自殺するのだろう。想像がつかない。考えたくもない。

今日指を切った。カッターでスッと。割と深めに。不注意だった。切ってすぐに指を洗った。血はなかなか止まらない。止血しようと手首を押さえても止まらない。血がどんどん溢れてくる。意識が遠くなっていった。息がしづらくなった。視界が霞んでいった。血の気が引いていった。頭は冷静なはずなのに、パニック的な感じに陥った。立てなくなって、座り込んで、胸が痛くなって、腹が痛くなって、頭が回らなくなった。でもやはり冷静で、手は心臓より高い位置を保った。血は止まった。すぐに冷やした。傷が塞がったのを確認して、絆創膏を貼った。しばらくは動けなかった。

 

この感覚を昔、一度体験したことがある。少し前に僕は死を目の当たりにしたのが高校の時で遅いって言ったけど、それは間違いだった。なぜ忘れていたのだろう。忘れていたことが不思議で仕方がない。僕にとってはかなり衝撃的な報せだった。

 

おじさんが死んだ

 

おじさんと言っても僕の母親の叔父さん。釣りが大好きで、よくお刺身をくれた。一度だけサメを釣ったんだって喜んで帰ってきたところに居合わせて、サメの刺身を食べさせてもらった。なかなかに美味しかった。なぜ回るお寿司にないのだろうと考えたほどだ。そんなおじさんが死んだ。当時小学3生だった。僕は死を理解していなかった。単語は知っていたけど、体験したことはなかった。おじさんは半年くらい前から体調を崩し病院に入院していた。その日は母親と伯母さん3人がおじさんのお見舞いに行っていた。しばらくして、母親たちは元気なうちに僕と従兄弟らをもう一度だけ会わせようと家に帰ってきた。でもその道の途中におじさんが死んだ。母が帰ってきた時は泣いていた。「おじさん死んじゃったんだって」そう言った。僕はなぜ母が泣いているのか分からなかった。そのまま僕らはおじさんの葬式に向かった。そこには動かないおじさんがいた。血の気は全くなく、本能的にもう生きていないことがわかった。その瞬間に死を理解した。すぐに気持ち悪くなった。意識が遠のき、呼吸が荒くなり、喉が無性に乾いた。僕はその場を離れた。近くの椅子に行こうと歩いたが、ふらつき、立てなくなり、今にも吐きそうになった。そんな僕を祖父が見つけ、椅子まで連れていってくれた。

 

この時と全く同じ感覚だった。指を切って、止まらない血を見て僕は死を連想した。僕の愛犬が亡くなった時、鼻から血が止まらなかった。その時の記憶が蘇った。ただ指を切っただけ。自分でもそこまで動揺するとは思わなかった。

 

やっぱり、僕は死ねない人間なんだ。そう改めて実感した。